Hævnen
『Hævnen』デンマーク語で「復讐」という映画を観た。
(英語タイトルでは「In a Better World」)
邦題は「未来を生きる君たちへ」。どちらかというと邦題と英語のタイトルは似たようなイメージを含んでいて、どこか祈りや願いのような気持ちが表れているが、原題だけはもっと直接的な問いを投げかけている気がする。実際に作品を見た後で考えてみると、私は原題の方が相応しい気がした。現実はこんなに厳しく、生易しい世界ではないということを改めて自覚させられるというか…。その上で、どうかこれから先の、未来の世界が、今の子どもたちが暮らす世界、築いていく世界が、無意味な争いの無い、愚かな暴力と憎悪を生み出さず、復讐の連鎖も無い、可能な限り誰も罪深く、取り返しのつかないことを起こさないでいられるような世界、社会であり、善悪について正しく判断のできる善き人間になってくれ、と言うような…。
復讐と赦し
善と悪
富と貧困
先進国と後進国
宗教と宗教
民族と民族
大人と子ども
親と子
身内と他人
男と女
夫と妻
強者と弱者
暴力と非暴力
理性と本能
親子愛
男女愛
生と死
医療と尊厳
強さと弱さ
・・・・。
1時間30分程の短い中にこれだけのテーマが実は込められていた(と、私は思った)。なんて深い映画だろうと思った。いろんなことを考えさせられた。我が身に当てはめて考えてしまうことも幾つか…。今の日本や知っている範囲の世界の状況に照らして、無い頭で思いを巡らしてみたり…。
目には目を、血には血で…。
「復讐」の連鎖を止めるには…。
もうそれは「赦し」しか無いのだろうと…。
自分が正しいと思うこと、客観的に、道義的に正しいことを貫く強さを持つしかないと…。
これだけの“深い”映画を、ぜひアベに見せてやりたいと思った。今、自分はどんな立場で何をしようとしているのか。政治という表面的な現実的な部分を振り返ってもらうのももちろんだが、あのヒトの場合はもっともっと根本的な本質的な“人間の在り方”について、この映画から学び取って、考え直してもらいたいと…。そして、ぜひその“こたえ”を胸に、今の立場に帰ってこの国を導いていって欲しいと。そして、かつて“世界の警察”などと豪語し、世界の平和を保つどころか、各地にわざと紛争の火種を撒き散らし、罪も無い多くの人々を苦しめて平気な顔している米に媚び諂うことなく、堂々と独立国家として渡り合い、こっちが世界の文明国リーダーになるくらいの気概で立ち向かって欲しい。
なーーーんて、大袈裟に、でも結構本気で思ったりしたのだった。
そして、ちょっとこの映画の製作陣が気になって見てみたら、
監督&原案:スサンネ・ビア
脚本:アナス・トマス・イェンセン
この監督さん、過去の作品を見たら、なんと思い出深い『しあわせな孤独』の監督さんだった。なんたる偶然。
あの映画は私の中で印象に残っている、感銘を受けた映画の中の一つである。あの映画もちょっと複雑な人間関係が描かれており、恋愛観、価値観、死生観を問うテーマも含まれていたり、本当にしみじみ色々考えさせられた。昨日は、あの頃から特段、成長していない自分を振り返ってなんだか情けなくなったけれど…。
スサンネ・ビアさん。
今度は強く名前を覚えた。注目すべき監督さんだ。
主役(と思う)の俳優さん、ミカエル・パーシュブラントさんも良かった。
そして、この『Hævnen』はアカデミー賞やゴールデングローブ賞も獲ったらしいが、尤もだと思う。DVDの特典部分が観たくなって手に入れたいと思ったけれど、ちょっと今すぐには無理かな…。またいつかぜひ手に入れたい。
昨日は充実した時間を過ごせて幸せだった。
やはり私はメジャーな映画より、こうしたミニシアター系の作品が好きだなと再確認。